スケベな配信でリスナーのズリネタになる仕事

 

 

 

 チャットレディの体験入店が終わった。

 体験入店といってもこういう夜職に分類される店の体験入店は「体験」ではない。昼職の企業で言うところの「試用期間」だ。昼職と夜職の違いは、昼職は試用期間の時給が通常より安いのに比べて、夜職は体験入店の時給が通常より高い。だから、正式な在籍になる前に飛べば荒稼ぎ(といっても知れているが)できる、体入荒らしという概念が存在する。

 体験入店は3日間だった。実際にチャットレディをやってみた感想を記録する。今チャットレディをやってみようかと考えている人がいれば、そういった人たちの参考になればと思う。

 

 

 まず第一の感想は、「精神的にキツい」。本当にキツい。チャットレディという業種は、まあざっくり言うと、スケベな配信でリスナーのズリネタになる仕事だ。

 

 さまざまなズリネタの提供の仕方があるが、乳を寄せて揺らしたり、お尻を画面に映したりするというのはかなりのソフトサービスで(下着を脱ぐ/脱がないという選択も任せられている)、過激なライバーはオナニーやアナニーを配信する。法律の問題で性器は映せないが、みんなスレスレを行くようだ。

 オナニー配信をするライバーが相当数いるということは、わたしも当然リスナーからそれを求められるということだ。さすがにわたしはそこまでして稼ごうとは思わない。この世には少なからず公開オナニーを性的嗜好とする人間もいるが、わたしはそうではないし、なけなしのプライドが公開オナニーを許さない。

 

 リスナーはだいたい「いっしょに気持ちいいことしよう」のような文言で誘ってくるのだが、「そういうのやってないんで……」と断るとすぐさまチャットルームを退室する。「わかりました」の一言も残さずにいなくなられると、何も悪いことをしていないのに、なんとなく申し訳ないような、後ろめたいような気持ちになる。

 

 しかも地味にしんどいのが、配信は自分の映っている画面を確認しながら行うので、自分がズリネタを提供している様子が嫌というほど視界に入る。どうしてわたしは知らない男に向けて乳を揺さぶって媚びているのだろうと、なんだかとても屈辱的で惨めになるのだ。

 どんどん自分を嫌いになっていく。精神衛生に悪すぎる。

 

 

 

 とはいえ悪いことばかりでもない。

 会話のほとんどが下ネタやスケベ話で行われるので、かなりデカい声でハキハキと「ちんちん」や「おまんこ」と言うのだが、それが結構ストレス発散になる。日頃の鬱憤が、ちんちんやおまんこに乗って晴らされていく。

 わたしに必要だったのは、インターネットでぽちぽちお気持ち表明をすることではなく、デカい声で下品なワードを発声しまくることだったのかもしれない。

 

 あと、失礼な話だが、ライバーにはとにかく肥満体型の女が多い。おっぱいのサムネで釣っている女はもれなく肥満体型だ。乳がデカい女は身体もデカい。

 だから、それなりの体型でそれなりの顔面をしているだけでかなりちやほやされる。リスナーの判断基準がとんでもなく低い。

 

 

 たまに、スケベ話だけで満足してくれるというか、むしろそっちが目当てのリスナーもいる。いわゆるバーチャルキャバクラだ。ノリが合えば1時間ほど二人きりで会話する。わたしはそっちの方が性に合っている。やはりつくづく飲み屋の女である。

 ただ、これには向き不向きがあると思う。コミュニケーションが苦手な子は脱いだりオナニーしたりする方が稼ぎやすいのだろう。そういう理由で、ガールズバーやキャバクラを避けて風俗店で働く子もいるので、それはインターネットでも変わらないようだ。

 

 

 

 正直、一刻も早く辞めたい。性的なまなざしで精神が磨耗しまくる。こんなの気が狂ってしまう。お金をもらってもやりたくない。せっかくこれのために原付免許を取りに行ったのに、こんなに向いていないとは思わなかった。

 給料システムもうまくできていて、3ヶ月後にボーナスと共に満額が支給されるという仕組みで、飛びづらくされている。わたしはこれまでのアルバイトで飛んだことはないし、ここも辞めるならなるべく円満がいいのだが、どうやって辞めようかと都合のいい言い訳を探しつづけている。

 

 結局わたしにはコンカフェが適職だということに気づいた。ここまで長い長い遠回りをしてきた。飽きてきてやる気がなくなっていたが、ちょうどシフト提出の時期でもあるので、こちらで鬼出勤をさせてもらうことにしよう。今月のカードの支払いは諦めた。どうせ来月中に止まることには変わりないので、再来月ぐらいにまとめて払おうと思う。

 つくづく、楽に稼げる仕事はないものだな、と実感する日々だ。